昨今の高校の教室は、実に混沌としている。4つに分けられる性質の異なる受験生が混在しているのだ。なかでも、ある1つの受験生については高校教育において尽く無視され、酷いときには先生に邪魔までされる。

選抜方式ごとの大学入学者の割合

出所:文部科学省『平成29年度国公私立大学入学者選抜実施状況』

文部科学省の資料をみれば明らかなのだが、実にほぼ半分の受験生がAO入試や推薦入試等の「テストなし」で入学している。

この資料には一つ問題がある。「推薦入試」には大きく分けて、性質の異なる2種類の入試がある。授業をしっかり聞いて、先生に気に入られ、定期テストの点をしっかり取ることで、大学入学を確約してもらえる「指定校推薦入試」。学校の勉強(内申)に加えて、AO入試的な経験や実績も必要となる「公募制推薦入試」の2つだ。この大雑把な資料にCACAOがアレンジしてみるとこうだ。

選抜方式ごとの大学入学者の割合(詳細版)

出所:CACAO教育研究所

このデータをひとつの教室(40人)で考えてみるとより理解が深まるだろう。

一般入試:55.4% – 【22人】
指定校推薦:26.1% – 【10人】
公募制推薦:9.1% – 【4人】
AO入試:9.1% – 【4人】

一般入試で大学に入る人が22人でクラスの半分ちょっと、あとはAO・推薦入試という状況だ。これは実感としても正しいのではないか。

このような、“いわゆる進学校”の教室では、高校生のゴールは言うまでもなく「大学合格」である。ただ、高校教育は大学合格の手段が「一般入試」の一つしかなかった時代から全く変わっていない。昨今の教室には、“4タイプの受験生”が同じ教室で過ごしているのを知っておかなければならない。なかでもAO・推薦生は特にそう。

では、この“受験生4タイプ”で、大学合格に必要となるツールをまとめてみた。

一般入試:【(受験)勉強】
指定校推薦:【(学校の)勉強】【学校の推薦】
公募制推薦:【(学校の)勉強】【学校の推薦】【経験や実績】
AO入試:【経験や実績】

ここで分かるポイントは以下の3つだ。

1.実は【受験勉強】はクラスの半分しか必要ない
世の中の多くの人が誤解しているのだが、冬の寒い時期の一発勝負に対応した【受験勉強】が必要なのは、なんとクラスの半分、実に2人に1人ってところなのだ。逆に言えば、学校の勉強だけでは対応しきれないからこそ、塾や予備校に通う人がいるのである。高校生の通塾率は、AO・推薦入試が盛んになる前の1990年は約13%だったのが、2015年には約27%と約2倍にもなっている。(出所:ベネッセ教育総合研究所)

2.広義の【勉強】はクラスのほとんどが必要
一般入試の人は専門的な【受験勉強】が必要であったが、広義の【勉強】が必要なのは「指定校推薦」も「公募制推薦」も変わらない。その点では、受験生たちが日中の高校で受ける「授業」はクラスの36人(9割)が、その程度はどうであれ「必要」と言える。

3.AO入試の4人は学校がいらない
一方、クラスで最も少数派の「AO入試」は、もちろん卒業資格としての「学校」は必要なのだけど、基本的には【経験や実績】が必要なだけで、高校で受ける「授業」にはあまり意味がない。

では、受験生タイプごとの最適な戦略を整理しておこう。細かいことを言ってしまえば、受験生の状況や心境は日々変化するもので、一概に自分自身がどの入試を利用するタイプに属すのか考えた上で行動する、というのは非常に難しいのだが、受験生自身の行動の指針となれば幸いだ。

【一般入試】
古くからオーソドックスな「一般入試」の人は、日中の学校の授業を受けつつ、放課後は塾や予備校で、より専門的な「受験勉強」をすることになるだろう。より難度の大学を目指すのであれば、日中の学校の授業中に“内職”をするなどして、自分の学校外のライバルに差をつける勉強法が必要になることもある。

【指定校推薦】
学校から推薦がもらえれば、ほぼ100%で合格できる「指定校推薦」は、ただひたすらに「学校第一」。担任に限らず、学校中の先生に気に入られて、学校の授業を誰よりも積極的に参加して、誰よりも良い成績を取るのが最適な戦略だ。塾や予備校なんかに行かず、ただ学校の先生の言うことだけ聞いていれば良い。一般入試と違い、ライバルは学校内にいて、且つかなりの長期戦だ。そして、高校入学直後からコツコツやらなきゃならない。

【公募制推薦】
学校の勉強でそこそこ良い成績を取って、その上で「経験や実績」をアピールする必要がある。意外と評定平均も悪くないし、ちょっとした経験や実績もあるし、チャレンジしてみるか、という人が多い入試だ。全体的なバランスが重要になる為、【勉強】でも【学校内】でも【学校外】でも、全てにおいて気を抜いてはならない。ライバルは学校内にも学校外にもいる。

【AO入試】
少数派の「AO入試」にとって、ライバルは「学校外」にしかいない。そして、やはり「学校」はクラスの36人(9割)のためにカリキュラムが組まれている。勉強が必要ないAO入試の4人(1割)のことは全く考慮されていないのが実情だ。といっても、考慮したくても出来ないというのが本音だろう。さもなければクラスの人々の心が「勉強」から離れてしまう。また、「勉強」の優位性が失われることは、学校の先生に対する「リスペクト」の消失を意味している。そうなると究極的には学級崩壊だ。受験どころの騒ぎではなくなる。だからこそ、AO入試を「卑怯だ」とか「ずるい」と言ったりする先生もいるのは理解できるだろう。そんなのは言わせておけば良い。学校との関わりは最小限にして、周りの声は無視して、自分のやるべきことに集中していれば良い。

まず、多くの受験生は、高校の「勉強」は当たり前だ、という固定観念を捨てて、高校生活を送って欲しい。そして、目の前の先生は、あなたのことを第一に考えて何かを言ってくれていると感じるなら、それは大いなる勘違いだということを自覚すべきだ。学校の先生にとって大事なのは「学校そのもの」であり「先生自身」なのだ。