大学進学に重きを置く進学校において、一発試験に備える「受験勉強」や、内申書的な「学校の勉強」など、「勉強」そのものが必要ない「AO入試」で受験する人が心得ておくべきなのが、スタディ・ハラスメントいわゆる「スタハラ」の被害だ。

AO入試(と推薦入試のごく一部)は進学校にとって抜け道すぎる。というのも以前述べたとおり、進学校の教室には主に4種類の受験生がいて、うち9割は【勉強】が必要で、AO入試の【勉強】がいらない受験生は、1割しかいないのだ。ひとつの教室で考えてみれば、勉強がいらない人、というのは極めて少数派なのだ。クラスの9割が日々勉強に精を出して取り組んでいる中で、1割の人が「勉強いらない」と本音を言い出したら、多数派の勉強している人たちの士気を著しく低下させ、厄介なことになる。

そこで、学校においては、多数派の「勉強が必要な人」のメンタルを守るために、少数派の「勉強がいらない人」に対して、決して本当のことを口にすることのないよう「スタハラ」が横行してしまうのだ。クラス全員、一人も欠けることなく「勉強して大学合格」という目標に向かって努力する。それしか方法はないんだ、と錯覚させる教育が推奨され、蔓延している。そこから離反するものは誤った人間、もしくは卑怯な人間だと烙印を押される。もちろんこれは事実と異なる。ひとつのクラスでいえば大体4人くらいは、実際に「勉強いらず」で大学に入学する。学校側の都合を押し付ける、まさに卑劣な「スタハラ」なのである。

そこで今回は、AO・推薦受験生に降り掛かる「スタハラ」事例のなかで、代表的なものいくつか上げる。スタハラへの対処法など、実際によくある事例とともに紹介しよう。

1.勉強しろスタハラ →【対処法】スルー
学校の先生などから、理由の説明もなく、ただ「勉強しろ」と言われるものだ。勉強するべき合理的な理由は全く説明されない。むしろ勉強が要らない合理的な理由を説明しても、完全にスルーされ、ただただ「勉強しろ」と繰り返されるものだ。このスタハラへの対処法は、スルーに徹することだ。それしか方法はない。三者面談など、環境型のスタハラになってしまい、かなり厳しい状況に陥ることもあるかもしれない。取り繕うような言葉(「勉強します」等)を言ってその場を回避し、実際は勉強しないなど、高度なテクニックが必要になる。

2.濡れ衣スタハラ →【対処法】スルー
先生はもちろん、仲間だと思っていた受験生からも、「AO入試はズルい」や「ズルしているからな」等のポジショントークをされることがある。このスタハラへの対処法も、スルーの一択だ。全く気にする必要はない。どんな方法で受験しようとも、君の自由なのだから。

3.AO入試やめろスタハラ →【対処法】スルーor交渉
「AO入試の受験は学校として認めません」、そんなこと学校に言われる筋合いは全くない。そもそもAO入試は「自由応募」が原則だ。調査書など学校側が発行する必要のある書類もあるが、それは大学側が受験資格があるかどうかを確かめるためのものだ。このスタハラへの対処法も、やはりスルーだ。ただ、調査書等の書類すらも出し渋る学校もある。この場合は、AO入試が「自由応募」の入試であることを根拠に、学校の先生に交渉するのが良い。なかなか首を縦に振らないかも知れないが、AO入試の場合、学校側が拒否する正当な理由は無いのだから、根気よく交渉していこう。最後には、学校側も渋々、必要書類を用意してくれるものだ。

4.推薦状出し渋りスタハラ →【対処法】交渉or転校or諦めるor他の先生
これは、学校長の推薦が必要な「公募制推薦入試」の場合で、形式上「学校長が推薦」が出願条件の一つになっている。これが少し難のあるスタハラで、受験生が学校側に受験の意思を示しても、なんと「推薦しない」と言われてしまうことがあるのだ。特殊な事例で、東京大学推薦入試のように、「1校につき男女1人ずつしか推薦することが出来ない」といった制約がある推薦入試であれば、学校内選考を実施して、推薦されない人が出てくることもあり得る。しかし、大半の公募制推薦入試は、1校あたりの推薦人数を制限していない。制度上、ひとつの高校内で、ある公募制推薦入試を受験したい人が複数人出てきたとしても、推薦状は受験したい人全員に出して良いのだ。しかしながら、実際には学校内選考があり、推薦するかしないかは学校側に判断が委ねられ、推薦されなければ公募制推薦入試を受験することすら出来ない、そんな「スタハラ高校」が実在するのだ。このスタハラへの対処法は、まず学校内選考をするような「スタハラ高校」にそもそも入学しないことだ。このような「スタハラ高校」は、CACAOの実感データではあるが、公立高校よりも私立高校に多い。一方、もし入学してしまっている人は、どうすれば良いのか。やはり、あきらめて頑張るしかない。それか思い切って、公募制推薦入試をやめてAO入試にする。そのような手しかない、というのが現状だ。どうしても受けたい入試であるならば、いま通っている高校をやめて、通信制高校等の自由が効く高校に行く、という選択肢もあるにはある。といっても、大半の高校は、公募制推薦入試であれば、学校内選考なしに推薦状を実質無制限に出している。もし阻まれるようなことがあれば、他の高校の推薦状発行状況等をリサーチして、それを根拠に学校側に根気よく交渉していけば、最後には折れてくれる「良心的な高校」もある。あとは日頃から、いざという時に味方となってくれそうな先生と仲良くしておくことだ。担任の先生には「推薦しない」と言われても、他の先生に相談してみたら上手くいくこともある。

5.センター強要スタハラ →【対処法】スルーor試験会場で寝る
「AOを受けてもいいけどセンターは受けろ」といった、学校の先生が“譲歩している風”のスタハラだ。そもそも、AO入試であれば自由応募なのだから、先生に譲歩される筋合いはない。そして根本的なことになるが、そもそも「センター試験に備えた勉強が大学入学後に役立つことはない」。これは確かだ。このスタハラへの対処法は、とりあえず「センター受けます」と言っておいて、実際には受けない。これに尽きる。ただ、先生によっては、ヤ○ザさながらの因縁をつけて卒業させてくれない「スタハラ先生」がいるので気をつけて欲しい。身近にいる先生の本性をよくリサーチして、パンドラの箱を開けないように気をつけよう。そして、こういった些細なコミュニケーションスキルはAO・推薦入試にも非常に役立つ。日頃から練習しておくのがベストだ。ところで、センターを受けるだけで先生の機嫌が収まるのなら、こんなにラクなことはない。実際に会場に足を運んで、くだらないペーパーテストであくせくしている受験生を観察しながら、自分は鉛筆の心地よいリズムをBGMにでもして、睡眠時間にするのもいいじゃないか。

6.留年スタハラ →【対処法】意外と留年しないor誠意を見せる
成績をつける先生の実力行使によって「留年」させることで、大学進学の道を閉ざせるという、あまりに卑劣で悪質なスタハラである。ちなみに「留年」は、またしてもCACAOの実感データで申し訳ないのだが、公立高校だと基本的にあまりない事象で、私立高校だと割とありえる事象だ。このスタハラへの対処法は、最後の一回だけ「誠意を見せる」のだ。といっても、しっかり勉強をする必要はない。ある程度勉強した“スタンス”で十分なのだ。「スタンス」というのは「構え」だ。成績をつける先生に「あんなに勉強しなかったやつが勉強している!奇跡だ!」と思わせればこっちのもんだ。ただ、この「誠意を見せる」程度は、先生によって様々だ。進級や進学がかかっている、実にセンシティブな問題で、せっかく合格した大学に進学できないなんてこともあるかも知れない。これに関しても、先生の本性をよくリサーチして、細心の注意を払って実施して欲しい。

このような「勉強を強要することで人を困らせる行為」を、スタディ・ハラスメントいわゆる「スタハラ」として扱った。CACAOは、これらの行為が受験生にとって「悪いこと」であることを広く周知させ、将来的に「無意味な勉強」を強要することがない社会になって欲しいと切に願っている。ところで、似たような言葉に「セクハラ」がある。セクハラは平成元年、1989年のユーキャン新語・流行語大賞でも選ばれた言葉だ。セクハラという言葉がなかった時代、初めて「セクハラ」という言葉が誕生したことで、隠れていた社会問題が多くの人々に認識され、困っている人々の多くが救われた。そもそも、現在では「セクハラ」で定義されるような行為が、当時は「悪いこと」であるという認識さえも薄かった。言葉が認識されるだけでも、人々の問題意識は高まり、それらの被害は減っていくものなのだ。また、CACAOがAO・推薦入試専門の家庭教師を全国で展開してきた中で、多くのAO・推薦受験生が様々なスタハラ被害を受けているのを目の当たりにしてきている。スタハラはあってはならないことであり、スタハラがあれば厳しく批難され、スタハラが起こること自体も未然に防がれるべきだ。スタハラ被害の当事者となる我々受験生も、スタハラは断固として容認してはならないのだ。

ただ残念ながら、スタハラは未だ社会で認知されているとは言い難い。平成最初の流行語にもなった「セクハラ」と比べると、ぜんぜん知られていない。CACAOでも啓蒙活動を実施し、一人でも多くの人に、勉強の強要が「悪いこと」であると認識してもらうべく活動しているが、まだ道半ばである。しかし我々は、それに屈することなく、悪いことは悪いと言うべきなのだ。

“どんな方法で受験しようとも、合格しちゃえばこっちのもんだ。”